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井山裕太、七冠への道~~第1章~~東西決戦
「関西に将来タイトルを取りまくる新鋭がいるぞ。
若いのに勝ちまくっている。
井山裕太という名前を忘れるな。
将来の大名人だぞ」
という噂が関東に届いてきた。
「将来タイトルを取りまくる関西の新鋭」と言われる棋士は1年に1人か2人現れるので「またか」というのが率直な感想だった。
当時は関西よりも関東の方がレベルがはっきり高かった。
中学1年生で入段したという事実は驚きだったが、「どうせ関西だから入段できたんだろ。もし関東の院生だったらまだプロ入りしてないよ」と俺は評価した。
当時の関東で「将来タイトルを取りまくる期待の新鋭」と言えば井山と同期で入段した黄翊祖のことを指していた。
黄の強さを目の当たりにしていた俺は「井山がどんだけ強いか知らないけど、黄の方が上だろ」と思っていた。
太陽が二つ同時に昇らないように、同期入段の棋士が二人とも順調に大棋士への階段を駆け上がることはほとんどない。
本物はどちらか一方だけなのだ。
将来有望と目されていた井山と黄は仲が良く、共同で最新定石の研究をしていた。
研究結果は週間碁で連載され、現在は単行本にもなっている。
※『井山、黄の定石研究―進化する流行定石』というタイトルで日本棋院から出版されている。詳細は記事下の補足情報を見てね。
そんな両者が雌雄を決する絶好の舞台が用意された。
2005年、中野杯決勝と新人王戦の準決勝という若手の登竜門で両者は対戦する。
俺は黄の勝利を確信していた。
結果は…
井山の2連勝。
囲碁や将棋では「同じ年齢なら勝った方が将来有望」、「同じくらいの実力なら1歳でも若い方が将来有望」だという明確な判断基準がある。
大器晩成という言葉あっても実例はほとんどなく、若くて強いものがタイトルを制するのである。
2歳上の黄が井山に二連敗した結果、業界の評価は定まった。
百聞は一見にしかずのことわざ通り、「将来タイトルを取りまくる日本の新鋭」=井山 という等式が関東でも成り立ったのである。
タイトルをいつ取るのか、いくつ取るのかはわからない。
でも将来、大棋士になると誰もが認めた瞬間だった。
この後、黄も最年少で名人リーグ入り(当時)するなど、大器の片鱗を見せたものの、七大タイトルはおろか挑戦者にもなっていない。(これは張栩という壁を越えられなかったのも大きな要因)
勝負の世界は残酷なのだ。
補足情報
「井山、黄の定石研究」
『週刊碁』で2007年から2008年にかけて連載した「イソと井山の最新定石ファイル」を再編集したもの。
勝負の世界の残酷さを知ってから、当時の二人のやり取りを見ると何とも言えない感情になる。
10年近く前の最新定石だが、アマチュアにとってはまだまだ実戦で使えるモノも多い。むしろ、最近の定石しか知らない人にとっては新しい発見に満ちているとも言える。
ライバルが知らない手で翻弄すれば、簡単に1勝をモギ取れる可能性は高い。
Amazonで購入する→『井山、黄の定石研究―進化する流行定石』
この記事を書いた人
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囲碁界に詳しい謎の情報屋。
囲碁界の情報屋Aが書く記事は怪しさ満点なので東スポのような感じで読んだ方がいい。
「1を10のように言うことはあっても、0を1のようには言わない」が口癖。
ルールを知らない人にも囲碁を楽しんでもらえるようにあえて過激な記事を書いているという噂も…
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