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第2回電王戦ZENVS趙治勲名誉名人第1局解説(中盤編)

情報屋『11月20日に対局された第2回電王戦第1局の中盤戦を解説します。

第2回電王戦第1局解説(序盤編)

ここに書いた通り、序盤はZENが主導権を握りながらも、趙治勲名誉名人がしぶとく踏みとどまってほぼ互角の展開になりました』

左上隅の攻防ではZENの読みはイマイチ

囲碁担当『中盤戦では左上で攻防が始まります。

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白1とコスんで白3とカケツいだのは評判が悪かったですね』

情報屋『黒4とハネられて部分的に困っている。
もし続けて

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白1とオサえると黒2のホウリコミが手筋。
黒4の両アタリが厳しいので白つらい』

アンチコンピュータ囲碁協会会長(以下会長と表記)
『このまま打ち続けるとさらに悪くなるので実戦は右下へ転向した。
この碁を見るとZENは部分的に都合が悪くなると別の場所に向かうことが多い。
これも一種の弱点だろう』

右下隅の攻防ではZENの読みが冴えわたる
趙治勲名誉名人の疑問手を一瞬で指摘する

情報屋『右下隅の攻防ではまず先に趙治勲名誉名人が疑問手を放ちます。

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黒1のサガリでは下辺にヒラくべきでした。
実戦は白4のツギが好手で黒は困っています』

会長『ZENはこのサガリが疑問だと一瞬で見抜くんだ。
ニコニコ生放送の解説画面を見てもらおう

黒1のサガリを打った直後

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黒41対白59だった勝率が

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黒37対白63と一気に4%も落ちた。
疑問手を一瞬で指摘するのは対局者としては怖いね。

白4とツガれた直後の趙治勲名誉名人は困り果ててボヤきまくり。
これも第1局の見どころだな

でもこの後のZENは良くなかった。

zen1-18

白4は淡泊すぎ。
白8のツギを決める必要もなく、控室での評判が悪かった。
取られたことに気付いたZENは白10と左辺へ転向。
大打撃を与えるチャンスを逃してしまった』

情報屋『白4では

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白1とハネれば取られることはなかった。
白7までとセキに持ち込めば黒から実利と根拠を奪える。
決定的なチャンスを逃したんだ
ZENはかなり読めるはずなのに不可解ですね』

形勢判断システムが謎を解くカギ

会長『対局中はわからなかったけど、
ニコニコ生放送を何度も見たら原因がわかった。
ZENはなぜこのように打ったのかを解き明かすカギは
形勢判断システムにある。
形勢判断システムによるミスは上辺でも起こっている。
まずはわかりやすい上辺から説明しよう

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白1、3と決めたのは明らかに悪手だ。
黒4と取られて明らかに損している』

囲碁担当『ZENは白5のツギを利かしたかったんじゃないですか?』

情報屋『白5のツギを利かしたいなら

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白1とサガればよかった。
これでも白5のツギは利く。
実戦は黒地が2目も増えているので大問題だ』

会長『あとでニコニコ生放送を見たら驚いた。
ここにZENの決定的な弱点が潜んでいる。

この二枚の写真を見てくれ

130手目の形勢判断

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166手目の形勢判断

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この上辺を見て違和感ある?』

囲碁担当『どちらも上辺の白石が取られていますね。
別に違和感はありません』

会長『対局中は俺もそう思った。
上辺だけを抜き出したからもう一度見比べてくれ

130手目の上辺

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166手目の上辺

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微妙に違ってるのがわかるよね?』

囲碁担当『本当ですね。
166手目の方が黒で塗りつぶされた部分が大きくなっています。
どうしてこんなことが起こるんですか?』

形勢判断システムは確率と統計

会長『まずはこの形勢判断システムを説明しよう。
ここから何十万局と打った終局後に黒地(または黒石)になっているか、
それとも白地(または白石)になっているかを表しているんだ。

話を簡単にするため、100回終局して調べてみたとしよう。
100回黒地になっていたら大きな黒、
60回黒地(残りの40回は白地)になっていたら小さな黒を塗っている
白地はその逆だ

上辺の攻め合いは単純に読んでいるのではなく、
100回やったら90回ぐらい黒が攻め合いで勝つだろう
という確率と統計で黒く塗っているんだ
130手目でも黒が攻め合いで勝つ確率が高いけど、
166手目ではアタリになっているので逆転する可能性がさらに低くなっている。
だから

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このように黒がさらに大きくなっているんだ。
つまり、上の写真のZENは上辺はだいたい取られているけど、わずかに脈があると感じている。
下の局面では完全に取られていて黒地だとZENは思っているんだ。
地合いの計算が間違っているから評価値も微妙に狂う。

この時のZENの評価値を見てみよう

144手目を打つ前は

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白の勝率は62%だったけど、164手目を打った時点では

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白の勝率51%と激減している。

この間白も黒も疑問手らしき手は打っていないので上辺の形勢判断が狂っていたことがわかるんだ。
勝率12%の差は大きいので2目損しただけではない。
攻め合いが完全に負けていると悟った結果、勝率が12%も落ちてしまったんだ』

囲碁担当『なるほど、ZENは攻め合いになっている時の実利を実際より小さく計算してしまうんですね。
これは大きな弱点です』

会長『上辺の攻め合いはわかりやすいから、ZENもだいたい黒が勝つと読んでいた。
そのことを念頭に入れてこの図を見てくれ。

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右下を拡大するとこうだ!

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右下の攻め合いはちょっと複雑だからZENは白に脈が残っていると勘違いしている。
上辺のミスだけで12%も変わった。
右下隅の白は黒の大石に関する根拠でもある。
この攻め合いを白が勝つ可能性があると判断している罪は大きい。
このことが終盤戦で大きな意味を持ってくる
中盤編はここまで。
残りは終盤編で解説する』

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